ひとときが交差する場所
私が働いている
レストランには
色んな人たちが
やってくる。
モーニングを毎日食べに来る
常連のおじいちゃんは
注文するものは、いつも同じ。
卵を2つ使って
固めに焼いた目玉焼き
(醤油よりも塩で食べるのがお好み)と
ドレッシングをかけないレタスのサラダに
厚切りトーストと苺ジャムとバターを
オーダーする。
そのおじいちゃんは
図書館で借りた本を
読み始めるのが
食べ終わったタイミングだから
それを見計らって
お皿を下げに行くと
卵2つを使って焼いた目玉焼きのうち
1つだけを食べて
お皿にはあとの1つの黄身だけがいつも残されている。
そして
モーニングにセットでついている
ドリンクバーで
おじいちゃんは
冷たいカフェオレを注ぐのだけれど
そのおじいちゃんが
カフェオレをコーヒーマシーンから
注ぐ時に限って
かなりの高確率で
ミルクが切れている。。。
ミルクが切れている度に
おじいちゃんは
キッチンに顔を出して
笑いながら
こちらに向かって
「まーたーだーよー」
って大声で言って
ミルク切れを教えてくれる。
だから
こちらも
「いつも運がいいですね」って
笑いながら
ミルクを補充するのだけれど
おじいちゃんは
「そんなこと言ったって
宝くじなんて一度も当たったことないよ」
って言うから
「そんなの当たらない方が
人生棒に振らずに済むから、いいんですよ」
なんて
言いながらいつも2人でやりとりしてる。
そのおじいちゃんが
珍しくディナータイムに
来店されたから
「あれ?今日は珍しいですね」
なんて声を掛けたら
おじいちゃんが
なぜか
照れくさそうな顔をしている。
(どうしたのかな?)
と思っていたら
おじいちゃんの後から
小柄で髪を黒のリボンで
後ろに一つでまとめた
可愛らしいおばあちゃんも
一緒にお店に入ってきた。
(あら、デートだったのね)
って心の中で思いながら
窓際の落ち着ける席に
2人を案内してあげた。
料理を運びながら
2人の様子を何となく
見守っていると
2人とも言葉少なに
料理を口に運んでいたけれど
何だか初々しくって
とってもいい雰囲気で
見ているこちらも
あったかい気持ちになる
そんなお2人でした。
・・・・・・・・・・・
レストランの向かいのマンションに
1人で暮らしている
大阪弁を話す元気な常連のおばあちゃんは
最近透析を受け始めたそう。
塩分も糖分も気を付けるように
お医者さんから
言われているけど
「そんな医者の言うことなんか
全部聞いてられないわよ」
って言いながら
注文した海老ドリアとコーンスープを
残さずきれいに食べていた。
でも
部屋で1人でいるときに
何か食べようと思っても
喉がつかえて
なぜか食べられないと
ある時寂しそうにポツリ。。。
「体が多少しんどくても
ちゃんと自分の足で歩いて
外の景色を見ながら
ここのレストランにきて
店員さんと会話をしただけで
元気になって
不思議とご飯が喉を通るんだよ」
って言うから
おばあちゃんが
自宅で1人、食卓に向かう姿を想像して
なんだか切なくなった。
そのおばあちゃんが
しばらく来店されない期間があった。
おばあちゃんが1人で暮らす
通り向かいのマンションを
窓越しにふと眺めながら
「どうしているかな?」と
テーブルを拭きながら
気にする日が続いた
ある日のこと。
おばあちゃんが
おでこに大きな絆創膏を貼って
現れたので
「どうしたんですか?!」って
言ったら
そのおばあちゃんは
大きな声で笑いながら
「なんでもないところで転んじゃってね!
入院してたのよ」
「病院のご飯は味気なくてね」
「ここのご飯が食べたくて、
退院してすぐ来ちゃったわよ」
元気そうな様子にほっとしていたら
「大変なことがあったって
しおれてたら、つまんないでしょ。
だからいつも楽しいこと考えてなくちゃね!」
って言うから
「ほんとそうですよ!
笑って食べていっぱい寝て
楽しいことしましょうよ」
って私も言いながら
逆に励まされているなって感じました。
色んなことを乗り越えてきた
人生の先輩たちの言葉は
簡単な言葉であっても
いつもすごく心に響く。
この時のおばあちゃんとの会話も
もしかしたら他愛もない
雑談なのかもしれないけれど
経験を積んできた人たちの言葉は
人を元気にする力があるって
思う。
・・・・・・・・・・・・・
レストランに集うお客さんは
みんな他人同士で
言葉を交わすこともなく
それぞれの人生を生きているけれど
同じ場所で
ご飯を食べることを通して
同じ時間を共有している。
ご飯を食べることで
気持ちが緩み
体が満たされて
元気になって
またそれぞれの
持ち場に戻っていく。
みんな
きっと
ご飯を食べることで
心がふわぁっとするような
ひかりとか
あたたかみとか
幸せ感とかを
受け取っているのだろうなって
客足が緩やかになった時間帯に
ふと店内を見渡してみたときに
思いました。
お腹がいっぱいになった
お客さんたちが
本を読んだり
ぼんやりしたり
お茶を飲んだりする
思い思いの食後の時間を
過ごしているのをみて
心と身体を充電できる
ひとときをみんなで共有してる
レストランって
なんかすごくいいなって思いました。
私は料理をするのも
食べることも大好きだけれど
誰かが
美味しそうにご飯を頬張ったり
美味しさに浸っているときの
子どものような無邪気な笑顔を
見たときに
1番心が和みます。
そんなひと時を感じたくて
私はレストランで働いているのかもしれません。
「美味しいごはん」の大切さ
もっと
たくさんの人と分かち合えたら
嬉しいです。
2025年11月9日(日)
東京の西荻窪にて
「美味しいごはん」の映画上映会を
開催します。
詳しくは
こちらをご覧ください。
↓
https://note.com/tasty_ferret7711/n/na1c460d4acf0?sub_rt=share_b



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